Go On 坪井祐樹 BLコミック


「は、はい…?」。納得できないままぎこちなくこくりと首を動かした陸に、亜生は大人びて悪戯っぽい笑みを向けた。深い憂愁を浮かべる瞳に向かって、海は必死に訴えた。「ちょっと刺激が強すぎたかな。大丈夫か?」。

「黙ってるつもりは、なかったんだ。ただ俺……、いたっ」。「ワリ、ヤバい、マジで便所行く。おまえ教室戻ってろな」。

ディロンはハーコンを一瞥し、ルナラータのあるはずの方向に、遠い視線を投げる。

「名波が謝る必要なんてこれっぽっちもないよ。僕の自業自得だもん。名波はちゃんとポスター読んでたのに、読んでなかった僕が悪いんだから」。不特定多数の視線を意識から締め出して、傲慢な声での命令にオウム返しに従った。慌てて跳び起きる目に、自分の股間に消える彼の腕が映る。「そんな、の、覚えてない!」。腹が出ているかもしれない中年オヤジと、十人が十人、文句なしの美丈夫と称するであろう、樋口。長江泉水がシンデレラコンテストに出場するという情報は瞬く間に校内に広まり、泉水はその日の放課後には、知らない生徒からまで『楽しみにしてるよ』と声をかけられるハメになって、ますます落ち込んだ。

ハーコンの手から飛んだ太刀は、ほんのひと動作で拾える位置だ。お互いの行動にはあまり干渉しないことにしているとはいえ、彼がそんなふうに何も言わずに出かけることは珍しかった。痛みは胸から腹へ、さらに渚の敏感な部分の近くまで下りていった。「たぶん、もうダメだよ。コンテスト出場者の受けつけ締め切り日って、今日の一限目の休み時間までだったんだ。そして、いったん出場を希望したら、なにかよっぽどの理由がない限り、たとえば入院するほどの怪我とか病気とかね、辞退及び欠場は認められない。もし出場しなかったら、厳しい罰があるらしいよ。……あと一分もしないうちに休み時間が終わる」。江南は、篤臣の名を呼び、温かなうなじに音を立ててキスした。Yシャツ姿のまま、珍しく仏頂面で見上げてくる希が喧嘩ごしに言う。それを、さっきのアクシデントでまだ怯(おび)えていると判断したのか、彼はボソリと言った。

どれだけ自分がレオンを慕っても、最愛の 女 ひと を失った彼の傷を癒すことはできないかもしれない。不意打ちの刺激に、思わず唇が解けて、小さな声が漏れてしまう。無茶苦茶だと思いながら、竜二が愛しくて堪らないから、同じくらい憎らしい。(守ってやりたい……)そんな思いに突き動かされ、ウィルフレッドはいつしかごく自然に顔を近づけ、薄く開いたハルの唇に自分の唇を重ねていた。