真夏の夜は振り向いてはダメなのさ 小坂まさる 少年愛小説


呆れたように笑いながら、篤臣はようやく顔を上げた。

「リ・ブール社のパンフ忘れるなよ」。「あれ?」。どういう意味か分からなくて、眉を寄せ、樋口を見上げた。だがあいつだって知りはすまい、実はそれがいつからか、だなんてことは。ほたるの筋肉が鋼だとしたら、ユースフの筋肉は超合金並みに堅かった。喉に掛る声が、笑いを含んでいる。「ええ匂いやな」。

「……ああ」。「あ……今日は、もう……」。店の客を放ってはおけずに、静かに問いかけた。クリスマス・シーズンは忙しすぎてほとんど会えなかったし、年末年始も一緒にいられるだけでよかった。「あんな目立つポスターが、ところかしこにベタベタ貼ってあったのにか?」。何か、怒らせるようなことをしただろうか?やっぱりなんにも触ってあげてないのに、俺だけがイクなんて言うから、不快になったんだろうか。

伊織の前で猫を脱いで以来、かなり頻繁にあけすけな態度で迫り倒している自分に、彼は初めこそ大きな戸惑いを示したものの、きっぱりと拒絶はせず、苦笑しながらも窘《たしな》める程度でキスや抱擁を受け入れる。「そんなの、言えるかッ」。

「たとえばさぁ。英俊につきあっている人がいたとして、その人以外にキスするのって、どういう時かなあ?」。深いくちづけを交わしながら、片方の手をシャツの裾から潜ませて素肌を探ると、和が柳眉を寄せて制止を訴えた。この人を…、好きかもしれないと感じた。ところが。


ボーイズラブ小説作品紹介


ゴールデンウイーク明けの朝、トオルは会社に行くのを渋っていた。事情を知る飯島は、トオルの気持ちを察しながらも、なんとか説得して出勤させる。トオルが旅行先でバッタリと顔を合わせた早川は、あろうことかロイスを恋人と勘違いしていたが、そんな誤解をトオル自ら解けるはずもない。そのうえ、夏目には引っ越ししたことがばれてしまい……。

タイトル:終わらない週末ヘヴィデイズ
著 者 名:有馬さつき
レーベル:ダリア文庫e
発 行 元:講談社

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