勝利六人組 佐藤寛之 ボーイズラブ文庫
俺は荒い息をつくのがやっとで、言葉を発することなど、とてもできはしない。「いくたま、たるたま、まかるがえしのたま、ちがえしのたま、へみのひれ、はちのひれ、くさぐさのもののひれ、ふるべ、ゆらゆらとふるべ」。ついさっきまでは、『勇気を出していざ告白。だが、魔王と呼ばれる男が現れる気配もない。
「……樋口サンが、いいです」。反射的に宮地から体を離し、混乱した頭で宮地を見つめた。「…はぁぁぁぁぁっ?あんた、小児科の医者ぁ!?」。身体を密着させ、大日向が耳元でささやいた。反射的にきつく目を閉じると、瞼の間を湧き上がった涙がこぼれ落ちていく。なだめるように、八紘は大日向の腕に手をかけた。「ふふふっ」。
「お前が声を出さなければすむ話だ」。
唇に柔らかい感触。それが一体何だというのだ。
両親と喧嘩をして梅原彩奈のテディベアを見る為だけに、一人でこんな遠くまで来てしまった柚月は、大丈夫だと突っ張っていたけれど本当はとても心細かったのである。違うと言われていたのに。初めてグリーンテラスで顔を合わせた時は、『ヤ』のつく職業の人かと思った。「……変わった奴だ」。そう長瀬が言ったとおりになるのがわかっているから、必死で拒絶した。「乱暴に扱うことになるぞ」。「母さん!母さん!助けて母さん!」。
苛立ちを隠そうともせずに、大日向は八紘をにらんだ。と聞くと、彼は破顔して笑った。だからそっと手を伸ばして、もう一度その身体を抱き締めた。楢崎は唇を離すと、意識を浮遊させている渚のものを握りこみゆっくりと動きはじめる。息が苦しい。次の瞬間、化物の身体が揺らぎ、ぼろぼろと崩れ始める。
ボーイズラブ小説作品紹介
事故で両親を失い多額の賠償金を支払わなければならない望の前に、ひとりの男が現れた。彼は日比野家の弁護士・支倉と名乗り、望を引き取りたいと申し出たが、『日比野』とは母が逃げ出してきた実家のことだった。切実な金銭的事情により断ることもできず、日比野家に足を運んだ望は、そこで遥遼という美しい青年と出会う。とある事情から蔵の中に閉じこめられたままでいる遥遼に、望は次第に惹かれはじめて――。
タイトル:楽園までの距離
著 者